腰痛と筋肉の弱さは関係するのか?

健康情報

■腰が痛いのは筋肉が弱いから
■運動をして筋肉を鍛えれば痛みが治る
■運動不足で体に痛みが出ている

そんな言葉を耳にしたことはありませんか?

筋トレを始めて「痛みが楽になった」という方もいます。

しかしその一方で、
せっかくトレーニングを頑張ったのに
「思ったほど変化がなかった」
「逆に痛みが強くなった」
と感じる人も少なくありません。

では、なぜこのような差が生まれるのでしょうか?
その答えの一つが「非特異性疼痛」という考え方にあります。

非特異性疼痛とは?

腰痛を例に考えてみましょう。

病院でレントゲンやMRI検査を受けても
「骨や椎間板に大きな異常はありません」と言われるケースは非常に多くあります。

実は、慢性的な腰痛の約85%は
「非特異性腰痛(ひとくいせいようつう)」
と呼ばれています。
これは「検査でははっきりと原因が特定できない痛み」のことです。


「どこが悪いのかわからないけれど、確かに痛い」
というのが多くの方が直面している現実なのです。

「体幹の筋肉が弱いから腰痛になる」
「インナーマッスルを鍛えれば痛みは解決する」
「運動不足で体の痛みが出ている」

こういった説明を整骨院の先生から聞いたりネットで見たりする方も多いと思います。

もちろん、筋力は「体を動かす」「体を支える」うえで大切な要素です。
しかし、それが直接的に痛みの“原因”とは限りません。

整骨院の現場の意見

■筋肉が強く運動習慣のある方でも腰痛に悩む人はいます
■筋力が弱い高齢の方でもまったく痛みが出ない人もいます
■普段全く運動されていない方でも痛みの出ていない方もいます

大切なのは「筋肉の強さ」ではなく、
筋肉を正しく使えているかどうか」
「体全体の動きが整っているかどうか」です。

例えば
デスクワークで長時間同じ姿勢を続けると筋肉がしっかりとしている人でも腰痛が起きることがあります。

逆に、筋力が弱くても日常動作の使い方が上手な人は痛みが出にくいものと考えております。

治療で自分が大切にしていることは
「体の使い方」や「動きの癖」を丁寧に観察することです。

画像診断に映らないような小さなズレや、筋肉の過緊張、動かせていない部位を見つけるのが手技療法の役割だと考えています。

実際にチェックしているポイントの一例をご紹介します。

■歩き方のバランス
■重心の位置、傾き
■動作による連動性
■呼吸時の胸郭の運動、リズム
■座り方の姿勢

こうした「目に見えにくい要素」が積み重なることで、筋肉や関節に負担がかかり、やがて痛みに発展していくケースは少なくありません。

だからこそ、手で診て、整えることが非常に重要なのです。

近年は「EMS(電気筋肉刺激)」という機器を取り入れている治療院も増えました。

筋肉に電気刺激を与えて収縮させ、トレーニング効果を狙うというものです。

確かに一部の研究では短期的な痛みの軽減効果が報告されています。
しかし、
長期的な痛みの改善や日常生活での機能回復に関しては明確な効果は認められていません

研究論文的にも直接的な効果は
実証されていないです。

非特異性疼痛が筋肉による痛みであればEMSが役立つ場合もあります。

ただ、非特異性疼痛のように原因がはっきりしない痛みに対して
「高額な追加料金を払ってまで導入するべきか?」
と考えると、私は慎重になるべきだと思います。

そのため私自身は、EMSを積極的におすすめしていません。
やらないよりやった方がいいレベルの位置づけと考えております。

それよりも、手技による感覚的な診察と、前回の施術からの変化を丁寧に追うことの方が大切と考えます。


腰痛をはじめとする多くの慢性的な痛みは「筋肉が弱いから」だけでは説明できないことが多くあります

■痛みの多くは「非特異性疼痛」と呼ばれる原因不明のもの
■本当に見るべきなのは「筋肉の強さ」ではなく「体の動かし方」「使い方」
■EMSは補助的な役割であり、必須ではない
■治療院では、目に見えない体の状態を“手で診て整える”ことが重要

痛みに悩んでいる方は、筋トレを始める前に一度、
自分の体の状態を客観的に知ることをおすすめします。

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