はじめに
整骨院に行ったときに
よくわからないまま白紙の書類に署名したけど…あれって大丈夫?あれは何だろう?
そう感じたことがある方は少なくないと思います。
先生が【保険の請求に使うものです。ここにお名前を記入をお願いします】
という決まり文句でとりあえず書くということがあると思います。
しかし実際の現場でもこれは何?と詳しい説明を求められることもあります。
実は、整骨院での「白紙委任状(レセプト)」へのサインには注意するべき点があります。
白紙の委任状は、レセプト用紙(診療報酬明細書)と呼ばれ一ヵ月ごとの治療経過や治療費の請求を保険者さんにする際に提出するものです。
診療報酬明細書は、整骨院以外に内科や整形外科など病院でも提出されています。
この記事では
なぜそれが問題なのか
そして患者さんがトラブルを避けるために何をすればよいのかを
整骨院の専門家の立場から解説します。
整骨院では何に使われているのか?
■まず白紙委任状とは、本来署名者(=患者さんや被保険者)が内容を確認して同意するべき書類に、内容が空欄のままサイン(署名・捺印)することをいいます。
大げさな言い方をすると「あとで内容を記入してもいいですよ」と相手に全てを任せる状態です。
普通なら内容を確認しないままサインしないと思いますが整骨院では便宜上月の初めに来院された際にサインをもらうのが通例になっています。
実際に厚生労働省の見解でも白紙のレセプトにサインをもらっても問題はないとされています
整骨院では、健康保険を使って施術を受けるときに「療養費支給申請書」という書類を作ります。
しかしこれは本来
■患者情報
■負傷部位
■治療内容
■来院日数
■保険者(協会けんぽなど)への申請額
などが記載されたうえで、患者さんが「確かに治療を受けました」と署名する書類です。
ところが整骨院では、これを内容が未記入のまま署名させる(白紙委任)ケースがあります。
患者さんから見ると、「ただサインしてと言われたから…」という状況です。
ではどういうことが問題になるのでしょうか?
【白紙にサイン】が問題になる理由
白紙委任状は、後から整骨院側が内容を自由に書けてしまいます。
■実際よりも多く来院したことにされていた
■ケガをしていない部分が水増しされている
■治療していない部位を記入される
こういった恐れがあります。
こうした行為は「療養費の不正請求」となります。
整骨院はもちろん、患者さんにも影響が及ぶことがあります。
整骨院側には、不正請求の行政的な処分が行われます。
保険医療機関の指定取り消し
→ 柔道整復師として保険請求ができなくなる。
再指定まで数年間、または永続的に不可となることも。
返還命令
→ 不正に受け取った給付金を全額返還。
(過去数年分さかのぼって請求される場合もあります)
※内容が悪質な場合には、加算金の支払い、全面的な調査の上でその他患者様の分までカルテの提出や監査に応じる必要のある場合があります。
実際の摘発例
• 負傷部位の偽り架空請求で数百万円を不正受給 → 懲役2年・執行猶予4年
• 来院日数水増し → 柔整師免許取消+返還命令
来院日の偽り、部位数の水増しは昔からよく言われているダメな保険請求の内容です。
※最近はSNSや口コミなどで情報が拡散しやすく、
不正請求が「患者側から通報」されるケースも増えています。
どうやって請求内容の違いに気が付くのか?
保険者から「照会」が来る
では、どのようにして請求内容の違いに気が付くのだろうか?
主に2つあります。
①完全ランダム形式で健康保険組合などの保険者から「患者照会」という文書が患者さんに届くことがあります。
内容例としては
■この治療は実際に受けましたか?
■どこの部位に施術を行いましたか?
■来院日の確認
「覚えがない」
「整合性が合わない」
項目が記載されているとその時点で問題が発覚します。
※しかし文書は忘れたころに送られてくることが多いので患者さん自身の記憶違いということもあります。
来院日の勘違いや実際に伝えた内容との相違などが起こる場合もあります。
最悪の場合、患者さんにも返還請求が
不正が発覚すると、整骨院だけでなく
患者さんにも返金を求められること、不支給と言って保険適応でなく自費扱いになり差額分を請求されることがあります。
もちろん、知らずにサインした患者さんに悪意はありませんし請求する整骨院側が正しく請求を行えば何も問題はありません。
しかし「署名した事実」は残ってしまうため、トラブルに巻き込まれるケースもあります。
実際に起きた事例
ケース1:来院していない日が記入されていた
週1回しか通っていなかったのに、月12回の請求がされていた。
照会で気づき、患者が説明を求めたところ「事務のミス」と言われた。
→ しかし実際は意図的な不正請求だったことが後に判明。
パソコンの入力(来院登録)は、多くの整骨院ではその場で行うことが多く
遅くてもその日のうちに行うのでこれだけ実際の日数と違う場合には、不正請求を疑うしかないと思われます。
ケース2:負傷していない部位を勝手に記入
①肩の痛みで通院していたのに、「腰」「膝」と複数部位で請求されていた。
→ 健康保険組合からの問い合わせで発覚。
②腰の痛みを訴えていたがなぜか
背部(背中)の筋肉の負傷や大腿部(太もも)の筋肉の負傷が付け足されていた。
患者様の訴えと外傷(ケガ)の発生起点があるのであれば何も問題ないです。
患者様が認識していないまま請求されているとこのように問題になることがあります。
患者さんが取るべき3つの対策
サインする前に内容を必ず確認する
なんとなくサインせずに以下の項目を確認
■来院日数
■負傷部位
■請求金額(または請求有無)
■治療内容
これらが空欄のままなら、絶対に署名しないようにしましょう。
疑問があれば、「これって何に使う書類ですか?」と確認するのが大切です。
「健康保険を使える理由」を説明してくれる整骨院を選ぶ
整骨院で健康保険が使えるのは、「原因が明確なケガ(外傷)」に限られます。
慢性的な肩こり・疲労などは対象外。
なんでも保険適応にしないでこれは、保険対象外ですと言ってくれる整骨院は信頼できると思います。
「保険使えないの?」前のところは、使ってくれたなどと言われますが逆にしっかりとした基準通りに対応していることが正解なのであり、無理に保険適応にしていた方が間違えなのです。
このルールをきちんと説明してくれる整骨院は信頼できます。
不正の疑いを感じたら、保険者に相談
加入している健康保険組合に相談しましょう。
開示請求と言って患者様は、請求内容を確認することができます。
「自分の知らない請求をされていないか」確認してもらいましょう。
保険者経由で整骨院側に請求内容やカルテについての情報を開示してもらえます。
【最後に】
整骨院は、本来「ケガの早期回復」「痛みの改善」を目的とした医療機関です。
患者さんが安心して通えるように、私たち施術者ができることは、正しい説明と正確な請求を徹底することです。
一人の不正請求が業界全体の評価につながってしまいます。
一度失った信頼を取り戻すことは、難しいです。
そもそも保険が厳しくなったなどと言われていますが
普通のことを普通にしていれば何の問題も起きません。
「怪しい」「グレー」と思いつつ段々と「ブラック」になってしまうと考えております。
一人でも多くの方が安心して整骨院に通えるように、この問題を業界全体で正していく必要があると考えております。

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